わ 私。

小さい頃、私は自分の事を「ちぃたん」と呼んでいた。
我が家には、私がまだ1歳2歳の頃に、
お父さんと遊んでいる時の声を録音したカセットテープが、
あります。
大事にとってあります。
「これが私?」と思うような、幼い小さいカワイイ声です。

「ちぃたん、これなぁに?」
『わんわん』
「じゃあちぃたん、これなぁに?」
『わーわーわぁー』

お父さんの声も、まだ若いです。

親からも「ちぃたん」と呼ばれていたし、
自分でも自分の事を「ちぃたん」と呼んでました。
大きくなるにつれて「ちぃたん」と言うのが、恥ずかしくなりました。
でも、私は自分の事を「私」と呼べるようになるまでに、
すごく時間がかかりました。
学校では「私ねー」なんて言えても、家だと「ちぃたんね」に戻ってしまう。

多分、ちゃんと「私」と親の前で言えるようになったのは、
小学校中学年の頃だと思う。
あの頃、何で「私」って言えなかったのか、今思うとかわいらしい。

その頃の名残か、今でも、親の前で「私」って言うのが、
恥ずかしかったりする。

家では自分の事を、「お姉さん」と言う事が多い。
弟が「お姉さん」って呼ぶから。
(難聴児には“お姉ちゃん”より“お姉さん”のが呼びやすかったため、
 我が家では、昔から「おねえさん」なのです。)
そして、親しい友達…というか、甘えさせてくれる人の前では、
自分の事を、「ちぃ」と呼ぶ事が多い。
だから子供だって、言われるんだよね。自覚してるんですけどね。

お姉さん。私。ちぃ。
そして、ちぃたん。
どれも、私。
等身大か、相手の下に居るか、相手の上に居るか、それを表す「ものさし」。